2013/08/13

散るぞ悲しき

国の為重きつとめ果たし得で 矢弾尽き果て散るぞ悲しき

梯久美子『散るぞ悲しき』を読んだ。著者が「ある手紙」から硫黄島総司令官「栗林忠道」に興味を持ち、調べ上げたノンフィクション。それにより、栗林忠道の人物像と、日米で多くの犠牲者を出した硫黄島の大激戦の史実が浮かび上がり、露わになる。満足度★★★★★。

梯久美子『散るぞ悲しき

この本は、佐々木常夫さんが著作『そうか、君は課長になったのか。』の中で、「繰り返し読んでいる本」と紹介していた本の一つ。「硫黄島の激戦の史実を知る」とともに「リーダーとはこうあるべきだ」という内容を含んだ本だった。

散るぞ悲しき』は衝撃的な話だったので、一気読みしてしまった。日本よりも米国の方で「Battle of Iwo Jima」の名で太平洋戦争屈指の最激戦地の一つとして一般に知られているそうだ。クリント・イーストウッド監督の『父親たちの星条旗』『硫黄島からの手紙』(2006年)がハリウッド映画で作製されるわけだ。この本を読んで映画をもう一度観たくなった。

本の中では、摺鉢山の山頂に星条旗を打ち立てる有名な写真「硫黄島の星条旗」(Raising the Flag on Iwojima)のエピソードも出てくる。星条旗は用意されたものだが、ポールは無かった。そのポールに使われたのは、実は日本軍の・・・、という感じで。他にも激戦中のエピソードが満載。

硫黄島の星条旗」(Raising the Flag on Iwojima)

お盆の時期に、戦時ものを読むのも日本人の義務かと。先日、ジブリ映画『風立ちぬ』を観た後に、その映画関連書として、堀越二郎『零戦』を買い、少しつづ読んでいる。それもあり、頭の中が何割か戦時中にタイムスリップ中。「日本の悪しき組織運営≒大本営的発想、縦割り、無責任・・」など、今の会社の組織論にも、戦時中のミスマネジメントの教訓を生かせるのではないだろうか、いや生かさねば、とも思った。

【語録】

・栗林の判断は、目の前の現実を直視し、合理的に考えさえすれば、当然行き着く結論だった。しかし、先例をくつがえすには、信念と自信、そして実行力がいる。「観察するに細心で、実行するに大胆」というのが栗林の本領である。彼は実に細かく「見る人」であった。定石や先例を鵜呑みにせず、現場に立って自分の目で、確かめるという態度を貫いた。

・実質をともなわない弥縫策を繰り返し、行き詰まって、にっちもさっちもいかなくなったら、「見込みなし」そして放棄する大本営。その結果、見捨てられた戦場では、効果が少ないと知りながら、「バンザイ突撃」で兵士達が死んでいく。将軍は腹を切る。その死を玉砕という美しい名で呼び、見通しの誤りと作戦の無謀を「美学」で覆い隠す欺瞞を、栗林は許せなかったのではないか。

(梯久美子『散るぞ悲しき』)

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