2013/11/30

君に友だちはいらない

瀧本哲史『君に友だちはいらない』を読んだ。満足度★★★★★。

とても刺激的なタイトルだ。その心は、必要なのは友達ではなく仲間。しかも「ウィークタイズ(弱いつながり)」。秘密結社を作れ。副題は「The Best Team Approach to Change the World」。

瀧本哲史さんの本は『武器としての決断思考』『武器としての交渉思考』がとても面白かった。仕事にも役立っていると思う。『僕は君たちに武器を配りたい』は、まだ読んでいないので、読んでみたい。



【語録】

「既存の組織や枠組み」に替わって、「個人が緩やかなネットワークでつながり、その連携の中で学習や仕事をし、プロジェクトベースで離合集散する」という世界観が現実のものになりつつある。

常に複数の緩やかなつながりを持った組織に身をおき、解決すべき課題を見つけて、共通の目標に「仲間」とともに向かっていくこと。これがグローバル化が進展する時代に、人々が幸福に生きるための基本的な考え方になるはずだ。

パラダイム・シフトは「世代交代」が引き起こす。古いパラダイムを信じている前の世代を説得して意見を変えさせるのは不可能であるし、それに労力を注ぐのは時間の無駄だ。自分達の信じるパラダイム、必要とされるパラダイムの信奉者を少しずつ増やしていく。そうやって「仲間」を作っていくうちに、いずれ旧世代は死に絶えて、新たなパラダイムの時代となる。

世の中を変えるのは、いつの時代も「新人(ニューカマー)」である。新しいパラダイムが必要になっているというのは、これまでの価値観が役に立たない状況になっているからだ。全く、前例が通用しない状況の中で、新たな環境にいち早く適応し、生き残っていくのは、常に若い世代なのである。

新しい事を始めようとしている人、若い人達に必要なのが「チームをつくる」ことなのだ。新しい価値観も、新しいパラダイムも、一人の力だけでは世の中に広めていくことは難しい。自分のビジョンを共有し、その実現に向けて行動する仲間を見つけ出して、初めてスタートラインに立つことができる。

世界で結果を残すために、最も重要なことを一つ上げるとすれば、それは「相棒」、つまり「ビジネス・パートナー」だ。ネイティブの信頼できるパートナーを見つけられれば、日本人の僕より10倍、100倍早く仕事が進んでいく。

異国の地で、信頼できるパートナーを見つけ出すためには、どうすればいいのか。「シンプルなプレゼン」が大切。外国人へのプレゼンテーションは、シンプルなアイデアでないと伝わらない。僕は事業について、2枚の写真で説明する。0点の答案写真と、東進でのDVD授業を受けた後の答案の写真。

もう一つ大事にしているのが、「俺はやっているぞ」と「後ろ姿」を見せること。実際に取り組んでいて、結果を出していることが伝われば、「コイツはマジなんだ」と分かってもらえる。

チームで活動するようになって感じるのは、「本当の仲間は一朝一夕にはできない」ということ。楽しい時も、辛い時も、一緒に過ごして初めて魂が通じ合うような関係を築ける。沢山の問題に直面し、それを乗り越えていくたびに関係性が強くなった。その関係を「laugh & tough」と呼んでいる。

一人の個人が持っている「強み」だけで、立ち上げから数百億円の売り上げを達成するまでに、会社を大きく成長させることは、まずえりえない。会社の成長スピードに合わせて、その時点での成功に必要な人材を、どこからか探してきて、評価をして、「人に投資する」必要が出てくるのだ。

多くのベンチャー企業が「設立3年以内に倒産」するが、その大きな理由の一つが「必要な時に、必要な人材を集めることができなかったから」なのである。

モノも知識も、沢山持ち過ぎると、それを自分がコントロールしていると思っていながら、逆にそれらに縛られてしまうことがある。いわゆる「専門バカ」がそれだ。ある分野については膨大な知識を持っているがゆえに、それ以外の視点からは物事が見えなくなってしまうのだ。

それを防ぐためにも、時々は自分の持つ「モノ」や「知識」を手放した方が良い。これは勇気のいる事だが、「持っているものが多い」が貴いのではなく、「必要なものが少ない」のが貴いのである。

「教養」の持つ大切な機能の一つが「自分と違う世界に生きる人と会話ができるようになる」ことだ。「外国語の習得」もそのためにある

「見晴らしの良い会社」に行った方が良い。「見晴らしが良い」というのは、その会社の扱っている商品やサービスを通じて、業界全体を取り巻く状況を含めて、広く理解できるという意味だ。

あらゆる業界内で「見晴らしのよい場所」に位置する会社や職場があるはずだ。そういう立ち位置を見つけたら、業界内のルールや常識を勉強しなごら、工夫や改善のチャンスを見出す。そして業界の中で良い仕事をしている人々と関係を構築し、彼らに学んでいけば、いずれは強いネットワークが自分の周りにできていくはずだ。

ルネサンス。垣根を越えた様々な才能が集まることで、専門領域を超えて、お互いに影響を与え合い、その結果、イノベーションが爆発的に起きた。そうした人が集まる場所を「交差点」と呼ぶ。

人脈のネットワークを構築する時にも、自分自身がその「交差点」になる事で、人脈の価値が単なる足し算ではない、相乗的な価値を生むわけなのだ。

チームのメンバーが似たような専門分野の出身者である場合、イノベーションの平均的な経済価値は高いが、画期的な発明が生まれる可能性は極めて低い。

それと対照的に、「多様な専門分野の出身者からなるチーム」が生み出すイノベーションは、失敗の可能性も高く、平均すると金銭的価値も低くなるが、ひとたび画期的な発明が生まれると、その時点で最も優れた発明をはるかに凌ぐ高い価値を生み出す。(リー・フレミング/経営論の研究者)

自分の持っているリソースやバックグラウンドと、まったく異なる人とつながった方が、大きな価値が生まれる。そのつながりを「ウィークタイズ(弱いつながり)」と名付けた。異質の人と出会うことで、自分でも思いもかけなかった「掛け算の変化」が生まれるきっかけとなる。飛躍的にチャンスが広がる可能性が高まる。

「自分とは違うネットワークを持っている人」とつながることが、後々に大きな意味を持ってくる。

ギブしてギブしてギブしまくろう。ギブの5乗をすることにした。その結果、しばらくすると、自分のまわりに、私がかつて支援したことがある人達が集まってきた。「Sに助けてもらった」というつながりで、お互いに交流するようになり、いつの間にかネットワークを作るようになった。困っていると、そのネットワークの誰かが勝手に助けてくれるようになり、それが結果的に自分に大きなテイクをもたらしてくれるようになったのだ。

成功というのは、「その人のまわりの人の成功」によって決まる。ギブ&テイクの関係を一回ごとに築こうとすることに意味がない。とにかく「ギブ」をしまくっていることで、「ギブのネットワーク」がまわりに構築され、そのネットワークが大きくなり、情報や交流の流通量が高まれば高まるほど、もたらされるメリットも大きくなる。

成功のポイントは「行動をする専門家」を集めることができたこと。「ウィークタイズ」が決定的な役割を果たした。「弱いつながり」であっても、つながっている相手の「信頼性」がきちんと担保されていることが極めて重要である。大震災のような危機の時には、本当に役立つ人脈とは、それ以前の日常の交流を通じて、「信頼が蓄積されたネットワーク」だけ。

ネットワークは「自分がどういう人間か」で決まる。

ビジョンをぶち上げろ。ストーリーを語れ。
Give your vision, and repeat your story. 

身の危険を顧みず、勇気を持って冷たい海に飛び込む「一匹目のペンギン」のように、まったく新しい市場に、リスクを背負って打って出る人のことを、英語圏では「ファースト・ペンギン」と呼んで賞賛する。

従来の日本の教育は、工業化する社会の中で、決められたモノを、決められた手順で作るのに最適なスキルをもった人を生み出すためのものだった。これからの教育は、21世紀の世界を生き残る力を与えてあげることを目的として、それができるクリエイティビィテイとリーダーシップを持つ人を教師にしないといけない。(松田悠介/NPOティーチフォージャパン)

ビジョンを作る上で最も大切な事は、最初に「でかすぎる絵を書く」こと。その実現に向けて努力していくうちに、回り道をしているようでありながら、徐々にビジョンが現実のものになっていくのである。

最初に掲げるビジョンは大きければ大きいほど良い。同時に、それは「多くの人が共感できる普遍的なもの」でなければならない。そのビジョンを常にチームの全員が念頭に置いて行動しなければならないし、簡単に変えるのはもっての他だ。だが、最終的なビジョンが揺るがせないとしても、途中途中の「目的地」はどんどん変えて良い。

むしろ、様々な寄り道を経ることによって、外部や協力者からのフィードバックを得ることができる。その途上で「当初の目的」からより深化した「真の目的」が発見されて、最終的なビジョンに近づいていくことができるのである。

リーダーがビジョンを示し、それに賛同して集まった仲間とともに事業を継続していく中で、自然と自分のポジションが決まっていく。自分は「探す」ものではなく、「周囲との関係」で決まってくるのである。

強いチームを作るには、冒険者となって、ビジョンとストーリーを語れ。ビジョンを語る上で最も大切なことは、「でかすぎる絵を書く」こと。勇気を持ってぶち上げろ!

会社で生き残るには「自分以外の誰にも生み出せない価値」を生まねばならない。

「色々な分野に才能がある人」ほど、中途半端にどんなポジションにも適応してしまうので大成しない。「特定の才能しかない人」が「正しいポジション」に身を置いたとき、パフォーマンスは最大化する。「間違った場所」に行ってしまえば、その才能は発揮されないまま埋もれてしまうのだ。

コンサルティング会社は課題の解決に「他業界の当たり前」を応用する。他業種の先行する成功事例をもとに、テーラーメイドで新しい解決法を作り出す。テーラーメイドの解決法を創りだすときにも、鍵となるのは「チーム」の概念だ。その時重要なのは、コンサルティング会社のメンバーだけをチームと考えるのではなく、顧客も取引先も「あらゆる関係者」を、自分たちの「チームメンバー」であると見なすことである。

そのビジネスを取り巻く商流(商品の企画から生産、小売、顧客の手元に届くまでの流れ)全体がチームの意志と行動によって変革され、「その中にたまたま自社とそのビジネスモデルが存在している」という状況が生まれたとき、真に課題は解決され、自社に大きな利益がもたらされるのである。プロジェクトに関わるチームメンバーを、自社のスタッフに限定することは、自分たちが見落としている変革の大きな可能性の芽を摘むことになりかねない。

「顧客を自分たちの仲間に引き込む」という姿勢は、ベンチャーの経営では必須となる。まったく新しいビジネスは、それで上手く行ったという前例が無いゆえに、商品を買う側が大きなリスクを背負うことになるからだ。

どうすれば「最初の夢を買ってくれる顧客」をつかまえることができるのか。その答えこそが「顧客を自分のチームの一員に引き込む」ことである。

その商品を買うことで得られるメリットが事前にわかっている場合は、「どれだけ経済性があるか」「競合の商品に比べてどれくらい優れているか」という競争になる。その反対に、商品を買うことで得られるメリットがはっきりしていない場合は、顧客や投資先をチームに引きずり込み、その商品の「ファン」となってもらって、一緒に広報活動や販売に取り組んでもらえるぐらいにしないと、うまくいかないのである。

まずは「自分が所属する業界」について正確に、深い理解をする。その上で、自分の業界を大きく変える可能性のある「ネタ」について考える。その際「そもそも、その業界がある意味は何なのか」を気をつける。同時に「業界のキーパーソン」あるいは「ビジョナリー(先進的なビジョンを示す人物)は誰かを考えてみよう。自分の会社とその人とはどのような関係にあるか。その人物はどんなことを為そおうとしているのか。それを考えてみることで、自分がどのような道に進めば未来が明るくなりそうか、ヒントを掴むことができる。

今いる業界、会社の中で自分は何をしたいのか。今持っているスキルや知識や経験によって何ができるのか。自分の出自や過去の出来事で、大きなものは何か。そして大切なのは、それらを生かして「世の中でどのような貢献をしたいのか」という視点を持つことだ。「個人のアイアデア」が「社会の進歩」とつながったとき、その一人の脳内で生まれた思いつきが、社会を変える「ビジョン」となる。

ストーリーを人に話すときに大切なのは、その話に「ロマンとソロバン」があるかどうか。ロマンはビジョンに通じる。「自分はこのように社会を変えたい」という熱い思い。それがロマン。ロマンを実現するには、それと同じくらいソロバン(お金、時間、労力のコスト計算)をきちんと考える必要がある。多くの人が「お金を払ってでも解決したい」と思えるような非効率や満たされないニーズがあるからこそ、ロマンはロマンになりうるのである。

採用の時必ず次ぎの質問をする。「今まであなたがやってきた仕事で、最も会社を儲けさせたのは何でしょうか。チームでの仕事の場合、あなたがそこで果たした主導的な役割は何ですか」。これに答えられない人は採用しない。逆にきちんと仕事で結果を出してきた人は、この質問に即答できるはずだ。

日本の家電メーカーが生き残る道は、基本的に二つしかない。一つはアップルのように、それまで誰が見たこともないような並外れた製品のコンセプトだけを作り、実際の生産については、外部の会社に委託してしまう方法だ。もう一つの方法は、ニッチだが、特定の分野では非常に強い部品を提供する会社として生き残っていく。

「ぜひとも仲間に引き入れたい人物」がいるときに、アメリカの企業経営者は「大きなビジョンやテーマ」をその人に与えることがよくある。

その仕事の未来にある「社会的インパクト」と「その達成のために、あなたの力がどれだけ必要か」ということ。この二つを提示して、「世界を変えるようなビックビジネスを一緒にやろうぜ」と持ちかけるのである。

アメリカの強さは、できる人間にわけの分からない「下積み作業」をさせないことにある。人を育てるためには、アメリカのベンチャー企業よように、いきなりトップスピードの現場に放り込む事が一番早い。

今の日本企業には、「志が大きなチャレンジを数多く繰り出す」という姿勢が欠けている。だから、かつてのウォークマンのような革新的な製品を生み出せずに、どうでもいいような付加機能を「てんこ盛り」したモデルチェンジ商品ばかりが発売され続けるのである。

アメリカの凄いところは、一つの産業の隆盛が終わっても、次々に「タマ」を変えて繁栄を続けてきたところにある。その裏側には「自分達が市場のルールを作る」という強い姿勢がある。

組織には「目に見えるもの」と「目に見えないもの」がある。公的な組織の中で話されていることよりも、非公式組織の中で話される情報の方が、本質的に重要で、自社や業界の動向をいち早く捉えていることは少なくない。

大切なのは「冗長性の少ないネットワーク」をなるべく多く持つこと。「冗長性」とは情報科学でよく使われる言葉で「無駄や重複のある状態」のことを言う。つまり「冗長性の少ないネットワーク」とは、自分がこれまで所属してきたネットワークと、重なる部分が少ないネットワークのことだ。

「自分のことを知らない人達」ばかりいるネットワークの方が、自分にとって価値が高い。自社だけの狭い組織で働き続けていると、「自社の常識は非常識」の状態に、知らず知らずに陥っている。「他業界の常識」については、その存在すら知ることができない。だから、自分と全く関わりのない集団に入れば、自然と「外部の価値観」を知ることになる。

夢を語り合うだけの「友だち」は、あなたにはいらない。あなたに必要なのは、共に試練を乗り越え、一つの目的に向かって突き進んでいく「仲間」だ。必要なのは、同じ目標の下で、苦楽をともにする「戦友」だ。友達も仲間も他人から「配られるもの」ではなく、自分自身の生き方を追求することで、自然にでき上がっていくのだ。

「他人の作った作り物の物語」を消費するのではなく、「自分自身の人生という物語」の脚本を書き、演じろ。

(瀧本哲史『君に友だちはいらない』)

0 件のコメント:

コメントを投稿