2014/05/18

柿安

経営理念「おいしいものを、お値打ちに、提供する」のために独自戦略(オリジナル)の追求。

今回のカンブリア宮殿のゲストは、総菜店「柿安ダイニング」の赤塚保正社長。プロの料理人が作る「デパ地下の人気惣菜店」。今回は「食(惣菜)」の分野で、「独自技術」「高付加価値」「時代を先取りした業態変化」と、カンブリア宮殿に紹介される優良企業の要素を完璧に備えた会社。それらが何故できたか、というストーリーがまた面白い。

創業者の理念、そして訪れる最大の危機(今回はBSE問題)、その「ピンチをチャンス」ととらえたときに、現在の「百貨店内の専用厨房を用意し、プロの料理人が惣菜を作る仕組み」という独自戦略が誕生した。そして、また新しい事業をトップが立案し、現在進行形で開拓中。

一番印象に残ったのは「トップの本気度」。社長がここまで本気なら、社員もそりゃ燃える⇒本気になる⇒「人が動く」⇒会社業績が伸びる。この「会社トップの熱意」という"人間的な部分"が、「脱工業化社会」の21世紀の企業ではより重要だな、と思った。

柿安と言えば、京都駅ビルに「三尺三寸箸、JR京都伊勢丹店」がある。また今度行ってみよう。

■カンブリア宮殿「柿安」
■柿安

赤塚保正社長(柿安本店)
【語録】

デパ地下に革命を起こした店。女性に大人気の惣菜店。挑戦が伝統を守る!老舗企業のサバイバル術。

常識破りの「出来たて、プロ味」。日本初の「店頭厨房」を導入。 デパートの地下3階。柿安だけが持つ専用厨房。専用厨房を持つことが出店の絶対条件。料理人が作る出来たて惣菜。他ではマネできない味が客を引きつけていた。

お客を集める「攻め盛り」。お客の心を読む「司令塔」。店長権限「何をどれだけ作るのかを決められる」 。

柿安は、140年以上続く「老舗」。精肉店をメインに発展してきた。「すき焼き」「シャブシャブ」の料亭、「ビュッフェスタイル」のレストラン、和菓子の専門店も全国展開。「内食、中食、外食」のすべてを手掛ける「食の総合企業」。

食べ物は限りなく出来たての方が美味しい。美味しいものさえ出せば、お客が喜ぶ。お客が喜べば、自然とお客が集まり、ちゃんと成り立つ。

どうしても失敗を恐ると、挑戦しなくなる。そういう点では「失敗してもいいよ」と。店長の中でも商売感覚がある人は20代前半でも、どんどん挑戦していく。

柿安最大の危機。2001年に発生したBSE、狂牛病問題。牛肉離れが起こった。1億8000万円の赤字。柿安が出した答えは「従業員は一人も解雇しない」。人あってのモノづくりであり、経営。飲食店の大部分を閉鎖を決断。かわりに総菜店を集中的に出店。料理人に仕事を与えるために年間20店もオープンした。プロが作る惣菜が人気を呼んで、店は大繁盛。翌年にはV字回復。

2006年、先代から社長を引き継ぐ時に「一言だけ言いたいことがある」と。変えていけないものは「経営理念」。変えていいものは「経営理念」以外のすべてを変えていい。経営理念「おいしいものを、お値打ちに、提供する」。

伝統を守りながら、新しさも打ち出す。これが柿安代々の流儀。

老舗企業は「のれん」を守るためにどうしたら良いかを考え続けるが、柿安にとっての「のれん」は、ただ守るというものではなく、様々な形で失敗を恐れずに挑戦することで、伝統が引き継がれていく。

「140年の伝統で培った本物の味」と、「時代にあった業態を開発する力」、それが必要だ。時代の変化をキャッチして、切り替えるのは柿安・赤塚家のDNA。

第二の創業。そのきっかけは、2001年のBSE問題。肉が売れなかった。それを売れないと悩んでいてもしかたがないから、「今のピンチをどうチャンスに変えるか」を当時の社長は考えた。そこでチャレンジしたのが流行になると思われた「中食」惣菜事業だった。

過去の延長線上で経営をやっていても大体先が見えている。「それを絶対変えてはいけない」というものは語り続けようと思うが、それ以外のものは、時代の変化が激しいから、「どんどん今の若い世代の人達と中心にやっていきなさい」というメッセージだと思った。挑戦したから「老舗」になれた。

常にお客から見て価値があるか、価値感があるのかないのか。「値打ち」というのは、決して値段が「高い」「安い」ではなく、値段以上の価値があれば、「お値打ち」だと思う。

価格設定は一般的に「原価がいくらだから、売価がこう」と決められるが、「原価積み上げ方式の価格設定」は絶対に失敗する。

実際に原価率が高くても価値がなければ売れないし、原価率が低くても、お客が価値を認めれば商品は売れる。

「好きこそ物の上手なれ」という言葉がある。自分が大好きな事だったら、その事に対して一生懸命になれる。一生懸命になれるから、いい成果が出て、褒められる。そして、さらにいい成果が出るようにプラスのスパイラルになる。まさに「好きこそ物の上手なれ方式」。

(赤塚保正/柿安本店社長/カンブリア宮殿)


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