2016/09/17

陸王

池井戸潤『陸王』を読んだ。足袋作りの老舗が、新規事業の「ランニングシューズ」のモノづくりに挑む。勝利を信じろ!満足度★★★★★。

めちゃめちゃ面白かった。さすが、池井戸作品。モノづくりの「情熱」「現実」「壁」「挫折」「裏切り」「アイデア」「発想の転換」「つながり(紹介、人脈)」「偶然」「チームワーク」「根性」、そして「勝利」がいかんなく描かれている。中小企業vs大企業。資金繰りのリアルな展開。マラソンランナーとシューズメーカー。若者の就職活動の苦難と成長。3回ほど涙する場面あり。ええ話やで。「名言」もたくさんあり。モノづくりに携わる中堅エンジニアとして、モチベーションがかなり上がった。

池井戸潤『陸王』
【語録】

・安い。「高く」ではなく「適正価格」で売れと言っているんだ。安売りしていいことは何もない。「安ければ売れる」というのは、商売を知らない奴の錯覚だ。

・私たちが提供しているのは、シューズだけどシューズじゃない。「魂」なんだよ。モノづくりをする者としての「心意義」というか、「プライド」というかね。

・「ノーリスクの事業」なんてない。ビジネスの原則だ。進むべき道を決めたら、後は「最大限の努力」をして可能性を信じるしかない。でも、実はそれが一番苦しい。「保証のないものを信じる」ってことが。まさに今、直面しているのが「将来を信じることの難しさ」だ。ともすれば困難な現実に打ち負けそうになる。「自分との闘い」でもある。

・ビジネスとは「一人でやるもの」ではない。「理解してくれる協力者」がいて、「技術」があって、「情熱」がある。「ひとつの製品をつくる」こと自体が、「チームでマラソンを走る」ようなものなのだ。

・何かに賭けなければならないときは、必ずある。そうじゃなきゃ、人生なんて面白くない。「人生の賭け」には、それなりの覚悟が必要。そして、勝つためには全力を尽くす。愚痴を言わず、人のせいにせず、できることは全てやる。そして、結果は真摯に受け止める。「全力で頑張っている奴」が、全ての賭けで負けるかとはない。いつかは必ず勝つ。

・必ずしも「品質の高いものなら売れる」というわけではない。「品質が高い」ものならいくらでもある。だけど「品質が低くても、売れるもの」はない。それが現実だと思った方がいい。売れるかどうかは予測不可能。商売ってのは元来、そういうもの。だから面白い。

・中でも特に教えられたのは「人の結びつき」だ。「金儲け」だけでなく、その人が気に入ったから、その人のために何かをしてやる。喜んでもらうために何かをする。カネのことはさておき、納得できるものを、納得できるまで作る。損得勘定なんて所詮、カネの話なんだ。それよりも、もっと楽しくて、苦しいかもしれないけれど、面白くて、素晴らしいことがあるんだな。それを「陸王」が教えてくれた。

・もし、世の中から「おカネっていう価値観」を取り払ったら、後には、「本当に必要なもの」や「大切なもの」だけが残るのだろう。

・「順風満帆の人生」なんてない。とくに経営はそうだ。いつだって苦しい。いまもだ。だけど、私には「全てを失った経験」がある。「絶望」を知っていることが、今や私の強みになり、欠かせないアイデンティティになっているのは、なんとも皮肉なことだ。

・あんなのはいくらでもいる。大企業の看板にあぐらをかいて、仕事の中身よりも、社名や肩書きにプライドを感じる連中が。仕事の質や誠意より、「利益を優先」させるような奴らなんて、世の中にはゴマンといるんだ。むしろ、ああいう奴らの方が多数派かもしれない。苦労を知らない。だから連中はダメなんだ。苦労を知らない人間ほど、始末の悪いものはない。

・世の中というのは、糾(あざな)える縄のごとし、ですね。

【禍福は糾える縄の如し】不幸と幸福は、より合わせた縄のように交互にめぐってくる。

Sadness and gladness succeed each other.
(悲しみと喜びは交互にやってくる )

・これからが本当の戦いだ。オレも、お前も。どんなときにも、勝利を、信じろ!


(池井戸潤『陸王』)

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